[料理名]タイ料理全般

バンコクにナマズの卵を使ったタイ料理があった!!

ナマズの卵を求めて、いざ!

「ナマズの卵を焼いた料理があるらしいけど、知ってる?」

バンコク在住の友人から、唐突にそんなLINEが入ったのは、日本へ一時帰国していた数週間前のこと。なんでも、前日に飲み会があり、その席でこの料理が話題になったらしい。

ナマズの卵……、どういう色や形をしているのか全く想像できないので、とりあえずタイ語でググることに。すると出てきたのは、それが生の状態で調理用のボウルに集められた画像だった。お世辞にもおいしそうな色をしているとは言えない。ドドメ色って具体的に何色かわからないが、もし色見本を作るとしたら、この色が採用されるのではないかという色をしている。

検索を続けるうちに、ナマズの卵は、産卵時期に関係するのか、食べられる時期が限定されること、料理にする場合は丸のまま揚げたり、ヤムにして食べることがわかった。屋台で丸揚げしたものを撮影したYouTube動画には、「食べたことある?」などと一言添えられている。どうやら、タイ人にとっても珍味らしい。

それを友人に伝えると、「えー、食べてみたい!」と俄然興味を示してきた。とはいえ、どこにそんな料理を出す店があるのか皆目見当がつかない。そこで、タイの食べログ、「Wongnai(ウォンナイ)」で検索に検索を重ねて出てきたのが、ドゥシット地区にある「ゲーン パー シーヤーン(แกงป่าศรีย่าน)」という店である。ゲーン パーとは、ココナッツミルクを使わない、野菜がたっぷり入った辛めのスープカレーのこと。独特の風味のせいか、日本人、タイ人問わず、これが好きという人を見たことがないし、実はワタシも苦手な料理である。それが看板料理という店も、ちょっと珍しい。

ナマズの卵とご対面!果たして、その味は…

バンコクに戻った翌日、早速この店に食事に誘われた。BTSのビクトリーモニュメント駅で待ち合わせて、そこからタクシーで店に向かう。ドゥシット郵便局の横にあるとのことだったが、着いてみるとそこはどう見ても店ではなく、厨房の裏手という感じなので戸惑っていると、従業員が数十メートル先を指差してくれた。店舗は改装中で、現在は仮店舗で営業中とのこと。とはいえ、新店舗の外観は白を基調にしたカフェのような印象で、ここでナマズの卵が食べられるとはちょっと思えない。

店内だけではなく外にもテーブルを設置

当然ながら店内は満席

テーブルについてメニューを開くと、確かにナマズの卵の料理がある!いやいや、メニューに載っていても、時期が限定されるということだったので食べられない可能性もある。「ナマズの卵はありますか…?」とおそるおそる訊くと、「ありますよ」と即答される。なんでも、養殖ものを使っているから、通年出すことができるのだとか。養殖までするなんて、この卵は食材としてそんなに需要があるものなのか?

ビールを飲みながら待つこと十数分後。テーブルに料理が到着すると、自然と「おぉーっ!」と歓声が上がる。友人もテンション高く、料理の撮影に余念がない。これがナマズの卵かぁ……。

卓上に並んだのは、ナマズの卵のヤムと、ガーリック炒め、そしてネット情報で評判が良かったタニシのカレーである。見た目は事前に調べた通りの色をしていて、おいしそうとは言い難い。

まずは、ガーリック炒めのほうからいただくことにした。どんな味をしているのか、期待マックスではあるものの、脳内でかかっているのはジョーズのBGM。おいしいものを食べ歩くのは大好きだが、今回ばかりはコワいもの見たさかもしれない。

一口パクリ。友人もパクリ。しばし無言が続く。本当は二人とも口に入れるなり、ドリフのコント並みのリアクションをしたかったのだが、味がついていないタラコをガーリックで香り高く炒めたという感じで、悪くない。というか、意外とイケる。めちゃくちゃ生臭いとか、強烈な風味がするとか、そんな味を想像していただけに、「あれっ?」という感じである。

続いてヤムを。これも、ナマズの卵自体に味がほとんどないせいか、青マンゴーの酸味と調味料の味が明らかに勝っていて、卵の味はうっすらとする程度。珍味だと思い込んでいたので、インパクトのある味を期待していたのだが、肩透かしを食らった気分だった。

ナマズの卵のガーリック炒め(カイ プラードゥック トート グラティアム /ไข่ปลาดุกทอดกระเทียม )

ナマズの卵のヤム(ヤム カイ プラードゥック/ ยำไข่ปลาดุก)

お薦めは野性味あふれるタニシのカレー

それよりも、タニシのカレーが丁寧に作られ、風味豊かだったことに驚かされた。通常、ぶっかけ飯屋などにある総菜のタニシカレーは、外側の殻ごと調理をするので、殻についた泥が落ち切らずにカレーに混じっていたり、食べるときにいちいち身を外さなくてはいけない。加えて、タニシは卵胎生なので、身を外したときに子タニシが中に詰まっていることがある。もちろんそれは食べられず、間違って口に入れると、ジャリジャリとイヤな音を立てて舌の上で砕けていく。

ところが、ここのカレーは殻から外した身だけを使っているので、前述の手間や不快感とは無縁である。濃厚なココナッツミルクの味に、タニシと臭み消しのチャオム(ชะอม アカシア属の木)の葉の風味が溶け込んで、グリーンカレーとか、マッサマンカレー等とは一線を画した、野性味あふれるカレーに仕上がっている。

タニシのカレー(ゲーン クア ホイコム แกงคั่วหอยขม)

この店は、ナマズやタニシの他に、雷魚、カエル、イノシシ、ウズラなどもあり、ジビエとまではいかなくても、そちら寄りの料理を出すお店らしい。土曜日の夜ということもあって店内は満席だったし、テイクアウトの料理を待つお客が店の前に何人も並んでいた。ほとんどのメニューが100~150バーツだったので、近所の気取らない旨い食堂といったところなんだろうなあ。

そうそう、写真を撮り忘れてしまったが、ドリアンの甘みと香りを凝縮したようなドリアンアイスクリームもお薦め。いわゆる普通のタイ料理に飽き足らない方に、ぜひ足を運んでいただきたい店である。

【SHOP DATA】
「ゲーン パー シーヤーン(Kaeng Pa Sri Yan / แกงป่าศรีย่าน)」
TEL:02-241-4216
OPEN:月:8:00~20:00、火~土:10:00~21:00(日曜定休)
ADDRESS:954/2, Nakornchaisri Road, Dusit, Bangkok
PRICE:カイ プラードゥック トート グラティアム120B、ヤム カイ プラードゥック120B、ゲーン クア ホイコム 120B、ゲーン クア ホイコム 120B、アイスクリーム トゥリアン35B
※現在は新店舗で営業中

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