以前から行ってみたいと思っていたタイ深南部。
特に訪れたみたいと強く思っていたのがヤラー県のベートンという街です。
マレーシアとの国境に近い場所にあるため立ち寄る日本人はほとんどおらず、情報も限られています。
そんな街に惹かれたのは、ここベートンの名産であるベートン鶏という存在でした。
バンコクのカオマンガイ屋で使われていることも多い鶏で、弾力のある肉質が特徴。この鶏を現地で食べたらさぞ美味かろうという、食い意地をくすぐられたことが、ベートンへの想いを募らせていた理由です。
とはいえバンコクからヤラー県まで直線距離で1,000km以上。ふらっと行ける距離でもなく悶々としていたのですが、2019年10月、ついにヤラー県へ行くことを決意いたしました。
目次
タイ南部最大の街ハジャイから陸路でマレーシアへ出国しタイへ再入国
バンコクからベートンへの交通手段はいくつかありますが、私はハジャイまで空路で行き、そこから陸路で向かうという方法を選びました。
ハジャイからベートンへ向かう陸路は、山を抜けて直接行くルートが一般的ですが、私はマレーシアへいったん出国し南進。再度タイへ入国するという珍奇なルートを選択。
こんなマニアックなルートをふつうの外国人旅行者なら選ぶことはありませんが、マレーシアへ出国するルートの方が時間的に早いということを知りマレーシア出国ルートを決断。
4時間ほどかかる陸路ですが、9人乗りバンだったらさほど苦痛でもなかろうと思っていた私の憶測は見事裏切られ、ハジャイ空港に現れたのは普通乗用車!
しかも7人乗り乗用車に乗客が満載!
私は運良く最後部の座席で2人だったのですが、中央席は体躯の大きな男性3人が肩を寄せ合うという、目を覆いたくなる惨状でございました。
到着して早々に出向いたのはベートン鶏のカオマンガイがある『ラーンジャルンカオマンガイベートン』
9時に出発した乗用車は一度マレーシアへと出国し、2時間後にはタイへ再入国。2時間だけのマレーシア滞在を満喫し、ベートンへ到着したのは13時でした。
私が事前に予約していたのは『Betong Hill Residence』。中心部からは少々離れていますが、価格は安く、それなり部屋でした。
バンコクを朝6時に出発し7時間ほどかけてやってきたベートン。マーレシアとの国境近くにある辺境の街までやって来た理由の一つは、「ベートン鶏を食べてみたい」という、目論見があったからです。
ホテルでバイクを用意してもらい、サイズの小さなヘルメットを頭の上に乗せて向かったのは、『ラーンジャルンカオマンガイベートン』。
ここのカオマンガイで使われているのはもちろんベートン鶏です。
14時閉店のところ私が来店したのは13時30分。閉店寸前で駆け込み私がオーダーしたのは、鶏を別盛りにしたガイサップとカオマン(ダシで炊いたご飯)、そしてガイトート(揚げた鶏肉)。
ガイサップには黒いタレがかけられ、明らかにバンコクのカオマンガイとは異なっています。
「これはね、ベートンならではのタレなので他では無いのよ」
そう話してくれたのは店主の女性。聞くとこの店は創業して30年以上経っていると言います。
ニンニクが加えられた特製のタレに絡められたベートン鶏は、肉に独特の弾力があり、臭みなどは一切ない。
私はベートン鶏を味わいながら、しばし瞑目。これを食するためにバンコクから1,000km以上も離れたベートンまで赴いたわけですから、ひとしおであることはご理解いただけるでしょう。
タイ国内での指折りの地鶏、ベートン鶏。
私のベートングルメ旅は、ここのカオマンガイから始まりました。
【SHOP DATA】
「ラーンジャルンカオマンガイベートン ร้านเจริญข้าวมันไก่เบตง」
TEL:089-654-2490
OPEN:06:00-14:00
PRICE:カオマンガイ45B
何を食っても旨い!地元の人気店『ターユン』
のちほど紹介する時計塔はベートンのランドマーク的な存在。ここから西へ向かい数十メートルほど歩くと、『ターユン』という食堂が見えてきます。
広い店内には丸テーブルがいくつも並べられ、中華レストランのような雰囲気。それもそのはず、『ターユン』は広東料理をもとにしたタイ中華料理を提供していると言います。
『ターユン』でオーダーした3品ともお見事。しみじみ「旨い」と呟かせてくれるほど、秀逸な料理の数々です。このレベルなら、他の何を注文してもハズレはないでしょう。
私がベートンで食べ歩いた中で一番の推しは『ターユン』です。
パックナーム パットガピ
パックナームという葉野菜をガピ(オキアミの発酵味噌)を使って炒めています。パックナームはタイ南部でしか採れないため、バンコクでこの食材を見ることはかなり難しいのだとか。
臭みやエグ味などはなく、ガピの香りが楽しめる一品です。
ムートー タウフーイー
タウフーイーというのはタイスキなどのタレに使われる「紅腐乳」。
豚肉にこのタイフーイーで下味をつけ揚げた一品。
想像していたほど紅腐乳の香りは強くなく、ほどよい風味でビールにも合う!
ミールワン パット
ミールワンはベートン特産の麺なのだそう。一般的なバミー麺とどういう点が違っているのか分かりませんが、その麺を使った焼きそばです。
こういったシンプルな料理がいちいち旨いんだ。
【SHOP DATA】
「ターユン ร้านอาหารต้าเหยิน」
TEL:073-230-461
OPEN:08:00-22:00
ベートン鶏を扱う人気店『カオマンガイ コーチャン』
ベートン鶏を扱う店ではこちらも有名のよう。『カオマンガイ コーチャン』はカオマンガイだけではなくいろんな料理を揃えています。
ここではベートン鶏は外し3種の料理をオーダーしました。
カオヨック/เคาหยก 280THB
豚肉を煮込んだ一品。広東料理が基本となったメニューでしょう。
ゲーンソム プラーガポン ドックダラー/แกงส้มปลากะพงดอกดาหลา 150THB
こちらはタイ南部料理のイエローカレー。メインの具材にはプラーガポン(スズキの一種)を使っています。
一般的にタイ南部カレーはかなり辛く、ときおり命の危険を感じることもあるので、覚悟を決めていただきましたが、それほどスパイシーではありませんでした。
プラチアン/ถั่วเจี๋ยน 120THB
トゥアファックヤーオ(いんげん)に見えますが、プラチアンという別種の野菜だそうです。これもタイ南部だけで採れるといい珍しい料理ではありますが、食べてみたところトゥアファックヤーオとの違いは判別できず。
『カオマンガイ コーチャン』へは夜にお邪魔いたしましたが、団体客が数組予約していたようで、ほぼ満席。
自社ファームでベートン鶏を育てているそうです。
【SHOP DATA】
「カオマンガイ コーチャン ร้านข้าวมันไก่ โกช้าง」
OPEN:08:30-20:30
創業70年以上のディムサム(点心)専門店
2019年10月4日。
この日はベートンで年に一度だけの菜食イベント(ベジタリアンフェスティバル)があり、私が滞在している日程で偶然開催されました。
ベジタリアンフェスティバルで有名なのはプーケット。私は数年前にプーケットの同フェスティバルを見に行きましたが、頬にいくつもの金属を刺している方々が街中を練り歩くという狂気的な祭りです。
ご本人たち曰く、何かが憑依しているため痛みは感じないと言うけれど、私のような凡人にそのような境地が理解できるはずもございません。
ゼッタイに参加したくない祭りのひとつです。
もしベートンへこの祭りを見に行く方がおられるようなら、『タイシーニー』で席を陣取ることをおすすめします。
パレードが通る真ん前に立地しているため、食事を楽しみながら狂気の行列を眺めることができるのです。
『タイシーニー』は創業70年以上のディムサム(点心)専門店。ギンジェー(菜食週間)中でも肉類の点心も売っています。
【SHOP DATA】
「タイシーニー ไทซีฮี่」
TEL:073-230-459
OPEN:05:00-11:00
タイのかき氷「チャオクワイ/เฉาก๊วย」
チャオクワイとは仙草を煮詰めたゼリーのことで、これにクラッシュアイスをかけていただくスイーツです。
のちに紹介する足湯温泉ベートンホットスプリングへ向かう道中に、このチャオクワイ専門店『チャオクワイベートンเฉาก๊วยเบตง』が建っています。
一見するだけで分かるほど木造家屋の築年数はかなり経っており、かといってボロボロなわけではなく、たいそう味わい深い趣を醸し出している。
一杯10バーツのチャオクワイかき氷は、炎天下をバイクで疾駆し火照っていた私の体躯を内側から冷却してくれるだけではなく、口の中でホロっと広がる仙草の香りが気持ちをほぐしてくれるのです。
【SHOP DATA】
「チャオクワイベートンเฉาก๊วยเบตง (วุ้นดำ)กม.4เจ้าแรก」
TEL:073-230-413
OPEN:08:00-14:00
PRICE:チャオクワイ10バーツ
ベートンの見どころってどこなんだ
今回のベートン来訪は食を楽しむことが主な目的。
とはいえバンコクから遠路はるばる来たわけですし、再びベートンの地を踏むことがあるか分からないので、観光スポットも訪れてみようといくつかをバイクで回ってきました。
ベートンのランドマーク的な存在 時計塔
ベートンでのホテル選びに迷ったら、中心部に建っている時計塔周辺から検索してみることをおすすめ。
本記事で紹介している店は、時計塔から徒歩で行ける距離に位置しているのがほとんどです。
夜になるとライトアップされるトンネル「BETONG MONGKOLLIT TUNNEL」
日中に訪れると平凡極まりないトンネルですが、夜になるとなぜかライトアップ。
トンネル周辺は薄暗く人通りが少ないため、孤独感に苛まれること必至ですが、危ない目に遭うような場所でもなさそうです。
ギネスブックにも載る世界最大の郵便ポスト
ベートンに建つ巨大ポストは、ギネスブックに掲載されている世界一高いポストです。高さはおよそ9メートル。見かけ倒しの見世物ではなく、手紙を投函できる本物のポストです。
コストがかかるのになぜこれほど高いポストが建てられたのか。
もともとは第二次世界大戦中に時計塔の近くに建てられたそうで、頂部にスピーカーを設置。何かしら非常事態が発生した場合、市民に向け放送できるようにポストを高くしたといいます。
戦争が終わりお役御免となったポストですが、現在の場所に移設しさらに高くしたのは、”世界一高いポスト”の称号を狙ったためではないかと私は推察いたします。
足湯温泉Betong Hot Spring(ベートンホットスプリング)
ベートンホットスプリングは中心部からバイクで20分ほどの場所にあり、地元ベートン民たちが集い、足をつけ、憩っている足湯温泉です。
私が訪れたときはこの足湯温泉に全身を浸し、温泉のように利用している地元民もおられました。
外国人はおとなしく、足湯の利用にとどめておくことを強く推奨いたします。
第三級寺院 ワット プッターティワート/วัดพุทธาธิวาส
ベートンでもっとも格式が高い寺院『ワット プッターティワート』。1917年に建立され第三級寺院に選ばれています。
17時までなら本堂内を見学することも可。
マラヤ共産主義者が作った地下トンネル「Piyamit Tunnel」
「Piyamit Tunnel」とは1976年にマラヤ共産主義者たちによって作られた地下トンネル。反政府活動を行なっていた彼らは、爆撃を避けるためにこのトンネルを発掘していったと言われています。
トンネルの長さは約1kmに渡り、9つの出入り口が設けられています。
マラヤ共産主義とはどういった団体だったのかを、Wikipediaより一部抜粋いたしました。
Wikipediaより抜粋
マラヤ共産党(Malayan Communist Party:MCP)は、1930年5月に英領マラヤで結成された共産主義政党。
マラヤ、タイ王国、インドネシアの活動を統括し、中国共産党の直接指揮を受けず、独自にマレー人、インド人、華人を入党させることになった。中略
反政府活動はマレーシアとタイ王国との国境地帯付近に移るが、1989年12月2日マラヤ共産党は、マレーシア政府ならびにタイ政府と、武装闘争放棄の平和協議を結び活動を停止した
ベトナムでいうクチトンネルのようなので、トンネル内を歩いて見て回れます。当然ながらエアコンがあるわけではないので、とにかく暑い!
私は早々に外界へと脱出し、そそくさと空調の効いた博物館へ逃げ込んだ次第です。
2020年6月 ベートン空港開港予定!
本記事の執筆時点でバンコクからベートンへのアクセス方法は、私のようにハジャイまで空路(もしくは陸路、列車)を使い、そこからバンなどに乗り換えて行く方法がひとつ。
2つ目はバンコクから列車でハジャイへ行き、乗り換えて国鉄ヤラー駅まで向かい、バンを使う手段。
もう一つはナラティワート空港まで飛び、そこから陸路を使う交通手段が主な3つです。
けっこうな時間がかかるためベートンに興味を持っている方でも腰が重くなるアクセスですが、そんな方々へ吉報!
現在、着々とベートン空港の開港が進められています。
開港予定は2020年6月。
タイのことですので予定通りに開港するとは到底思えませんが、2020年中には開港してほしいと願うばかりです。
私が開設したYouTubeチャンネルでベートンを紹介しています。
激旨!タイ食堂では、カヌンというタイ人女性がYouTubeでも情報を発信。私が撮影および編集を担当しておりますが、私自身が出ることは一切ありませんでした。
動画に出ることに一切興味がなかった私ですが、突如YouTubeデビューすることを決意。
個人のチャンネルを開設し、2019年12月1日より動画を配信していきます。
YouTubeデビューの第一弾の舞台として選んだのが、今回取り上げたヤラー県のベートンです。
今後、タイ地方の見どころや食に焦点を当て動画配信していきますので、チャンネル登録していただければもっとタイのことに詳しくなれると思います!