[料理名]タイ料理全般

創業1900年 バンコクでもっとも古い市場
「ナンルーン市場」を食べ歩く

2019-04-07

バンコク近隣の県には「百年市場」と呼ばれ古くから営んでいる市場があり、タイ人向けの観光場所として賑わっているところもあるほどです。”ピンクのガネーシャ”があるチャチュンサオ県には「タラート バーンマイ ロイピー(バーンマイ百年市場)」、バンコク隣県のナコンパトム県には「ターナー百年市場」「バーンルアン百年市場」、スパンブリー県には「サムチュック百年市場」などなど。
前述の市場はすべてに「百年市場」というタイ語が入っているので、100年以上営まれている市場であることがわかるのですが、バンコクに目を向けてみると「ロイピー(百年)」と冠された市場は「バーンプリー百年市場」しか知りません。(私が知らないだけで他にもあるならご一報ください!)
他県に比べ歴史が浅いバンコクとはいえ、ワットプラケオ(王宮)が建設されたのはトンブリー王朝が終わり現バンコクへ遷都された1782年なので、200年以上の歴史は有しています。
特に王宮周辺の旧市街地には老舗と呼ばれるような食堂などがいくつもあり、古い町並みが残っていることから、百年を超えるような市場があってもおかしくないはず。
そんなことを以前から思っていたのですが、最近になりバンコクにも百年以上の市場があったことを知りました。市場名に百年とは冠されていませんが、旧市街地の近くにある『ナンルーン市場(ตลาดนางเลิ้ง)』です。

ナンルーン市場(ตลาดนางเลิ้ง)とは

ナンルーン市場はバンコク中心地からやや北にありますが、それほど距離があるわけではないので訪れるにはさほど難しくはありません。ただ、MRTやBTSの最寄駅はなく、タクシーへ向かうにもランドマークとなるようなものは近くに無い。ローカルバスに詳しい若生りんか氏にローカルバスを使いアソークあたりからナンルーン市場へ行く路線があるか聞いてみましたが、一路線だけでズバッと行けるバスはないと言います。

ナンルーン市場が創業したのは、ラマ5世が世を治めていた1900年の3月29日。水上マーケットを除けばバンコクでもっとも古い市場だそうです。
市場内に並んでいるのはフルーツや野菜など生鮮品やタイのお菓子を売る屋台、数十年前から営業している食堂が多く集まっていることでも名が通っており、数十年この市場へ通っているタイ人も少なくありません。
それほど歴史のある市場だけにいろんな店を食べ歩いてみたい。今回は動画企画とも絡め、ナンルーン市場の店々を取材してきました。

ランチタイムの市場内。テーブル席が埋まるほど毎日集まります。

ナンルーン市場食べ歩き①|手作りバミー麺が光る 1944年創業のバミー食堂

実は私、過去にナンルーン市場へ訪れたことがありました。市場内にある『ルンルアン バミーギアオ ナンルーン』という店を取材したときです。取材した2015年当時、この店が歴史ある市場内にあることなんて露とも知らず、分かりづらい立地しているなんてことを書いていただけなんですが、手作りバミー麺が評判、という重要なポイントはおさえていたので安堵。

1944年に創業し、70年以上が経っている超老舗バミー食堂です。こちらのウリは前述したように、自家製麺を使ったバミーです。

「うちの麺は自家製の福建スタイルの麺です。他のバミー屋と違うのは小麦粉と卵だけを使っていること。水や着色料、防腐剤などは一切使っていません」

麺作りのレシピは無く、毎日変わる天気や温度、湿度によって小麦粉の量などを長年培ってきた感で微妙に調整。日々変化する気候に合わせているため、レシピは作れないそうです。
また麺の茹で方もしかり。毎日麺の仕上がりが変わってくるので、しっかりとした経験を積まなければ適切なタイミングで茹で上げができないと言います。

『ルンルアン バミーギアオ ナンルーン』はバミー麺だけではなく、ムーグローブ(豚のカリカリ揚げ)やムーデーン(タイ風焼豚)、カームー(煮込み豚足)もメニューにあり。
バミーのほかムーグローブもいただきましたが、ここの特徴は付けダレが2種類用意されている点です。一つは定番のシーユーダム。そしてもう一つが味噌を使ったようなタレ。どういった調味料を調合しているのかは不明ですが、この味噌ダレはムーグローブとの相性が良く、重たさもないのでおすすめです。

受け付けで電話対応しているのが店主の奥さんです

カームー(豚足)もあります。

汁なしのバミーは酢やナンプラーなどの調味料を好みで入れて味付けしていきます。麺をしっかり味わいたないらスープなしがおすすめ。

ギアオ(ワンタン)やムーデーンをトッピングしたスープ有りのバミー麺。

『ルンルアン バミーギアオ ナンルーン』の麺の特徴は透明感があること。

ムーグローブはぜひ味噌ダレを試してください。

【SHOP DATA】
「ルンルアン バミーギアオ ナンルーン(รุ่งเรืองบะหมี่เกี๊ยวนางเลิ้ง)」
TEL:02-281-9755,02-281-0862
OPEN:08:00-20:00(無休)
PRICE:バミーギアオ45B

ナンルーン市場食べ歩き②|珍しいイサーンソーセージの老舗

私がナンルーン市場で初めて出会ったタイ料理がこちら。市場内の一角を使い屋台で営業している『サイクローク プラーネーム』です。
11時に開店するのですが、開店前から店前に行列ができているほど人気。こちらの屋台で売っているサイクローク プラーネームがお目当てです。
サイクロークとはイサーンソーセージ。これと大きなボールに入った正体不明の具材を一緒に葉で巻きいただくそうです。
プラーネームとは、このボールに入っている具材だといいます。

「プラーチョン (雷魚)とお米、豚の皮を混ぜたものや、ガティアムドーン(ニンニクの漬物)などを巻いて食べるのよ」

右手が店主。この日はヘルプの方がいましたが、別の日に訪れた際はお一人でやってました。

開店前から行列ができています。

イサーンソーセージのサイクロークイサーン。これだけの量が売り切れると言います。

店主ご自身が作ってくれました。持ち帰り専門店なので、ほんとうは作ってはくれません。

上段から サイクロークムー/ไส้กรอกหมู 400バーツ/kg  サイクロークカオ/ไส้กรอกข้าว 300バーツ/kg  プラーネーム/ปลาแนม 300バーツ/kg  サイクロークプラーネーム/ไส้กรอกปลาแนม 50バーツ  ホーモックプラー/ห่อหมกปลา 50バーツ  ホーモックムー/ห่อหมกหมู 30バーツ

店主の女性はそう話し、私のために一つ作ってくれました。プラネームやガティアムドーンなどの酸味や甘みなどが絡み合いながらも一つにまとまり、イサーンソーセージと合うから不思議。私ですら初めて食べたサイクローク プラーネーム。創業して何年なのか。

「長いことやってるわよ。何年はわからないけど」

忙しくて忘れたフリをしているのか。それとも本当に創業年数を忘れてしまったのか…。私は何度か「ほんとに?」と聞き直しましたが、年数を答えてくれることはありませんでした。ここで諦められるかと、お店に並んでいる中年の女性に話を聞いてみることに。

「私は30年前から通っていますよ」

私が話を聞いた女性は、以前この近くに住んでいたのでよく通っていたそうですが、今はノンタブリー県に移ったのでたまに来て買っているといいます。
30年通う常連がいるとは『サイクローク プラーネーム』の底力やおそるべし!

【SHOP DATA】
「サイクローク プラーネーム(ไส้กรอกปลาแนม)」
TEL:02-281-2261
OPEN:11:00〜なくなるまで(日曜日休み)
PRICE:サイクローク プラーネーン50B

ナンルーン市場食べ歩き③|いい具合に煮込んだ牛肉が絶品!クイッティアオ ヌアトゥン

1日の営業時間はたった4時間という牛肉クイッティアオの専門店『ヌアトゥン ナンルーン(เนื้อตุ๋นนางเลิ้ง)』は、毎日ランチタイムになると満席になり、待たなければならなくなります。
扱っている麺種はセンヤイ(太麺)、センレック(中麺)、センミー(細麺)の三種。牛肉のクイッティアオといえば茶色いスープが定番ですが、こちらのスープは濁りがまったくなく、澄んでいると表現したくなるほど美しい。麺の上で存在感を表す煮込んだ牛肉(ヌアトゥン/เนื้อตุ๋น)は贅沢なサイズで、煮込み過ぎず適度な柔らかさを保っています。
至高のクイッティアオヌアトゥンと表現したくなる一杯。
『ヌアトゥン ナンルーン』はクイッティアオだけではなくガオラオも有り。以下が同店の全メニューです。

クイッティアオ/ก๋วยเตี๋ยว 50,60バーツ
ガオラオ/เกาเหลา 70,80バーツ
カオプラオ/ข้าวเปล่า 8バーツ
オーリン チャーダムイェン/โอเลี้ยง ชาดำเย็น 20バーツ

店主の男性は店頭で牛肉をカットし、注文を聞くなど常に忙しく立ち回っていましたが、私の質問に答えてくれただけではなく、ご家族が日本と関係していることまでお話ししてくれました。

「創業してからは40年以上が経っています。以前は父親が店主としてやっていましたが、今はリタイヤして手伝いに回ってもらっています。私の妹が大阪に住んでいる日本人男性と結婚したので、記事が出来たら見せてくれますか?」

忙しいながらも笑顔を絶やさない店主。滲み出る彼の優しさが、そのまま表現されたような極上クイッティアオをぜひどうぞ。

美しいスープと、煮込んだ牛肉が絶品!

店頭で手早く牛肉をカットしている店主。44歳だそうです(取材当時)・

店内だけではなく通路にも席を用意しています。

ランチタイム真っ只中。

1日4時間しか営業していないのに売り切れます。

【SHOP DATA】
「ヌアトゥン ナンルーン(เนื้อตุ๋นนางเลิ้ง)」
TEL:02-282-0608
OPEN:10:00-14:00(日曜日休み)

ナンルーン市場食べ歩き④|冷水にご飯を入れて食すペッブリー県発祥の宮廷料理

ナンルーン市場の食べ歩きを締めるのは『カオチェー ペッブリー(ข้าวแช่เพชรบุรี)』。注意しなければ通り過ぎてしまいそうなほど地味なお店でして、私もご多分に漏れず、何も気にせず何度も通り過ぎておりました。何度目か前を通ったときにふと店名を見たら「カオチェー」とあるのに気付き素っ頓狂な声をあげそうに。「カオチェー」とはペッブリー県発祥の宮廷料理といわれ、バンコクでこれを扱っている店はかなり少なく、この市場で出合えるとは思ってもみませんでした。
「激旨!タイ食堂」ではペッブリー県にあるカオチェーの屋台を紹介したことがあるので、そちらも併せてご覧ください。

店主の女性がほぼ一人で切り盛りしているこちら。彼女の出身地はカオチェー発祥のペッブリー県で、ナンルーン市場内では30年以上お店を営んでいるそうです。
ジャスミンで香りづけした冷たいお水をご飯にかけ、小皿に乗せたおかずでいただくカオチェー。暑く食欲がなくなる時などに、さらっといただける食事として考えられた料理です。一口食べるとジャスミンの香りが鼻腔から抜け、清涼感に包まれる。
ナンルーン市場では、バンコクではあまり見かけない珍しいタイ料理にも出合えました。

私が来店したときは、欧米人グループがフードツアーで訪れていました。

LINE MANでデリバリーサービスもやっています。

テーブル席はかなり少ない。

こちらがカオチェー。手前が三種のおかずです。

ご飯半膳ぐらいなので、他で食べ歩いたあとでもさらっといただけます。

カオチェーの作り方など、ここでは書ききれなかったことをいろいろとお話しいただきました。

【SHOP DATA】
「カオチェー ペッブリー(ข้าวแช่เพชรบุรี)」
TEL:089-488-3105,085-113-0580
OPEN:06:00-17:00
PRICE:カオチェー35B

他にも有名な店があるので一度だけでは回りきれない

ほんとうはもっと紹介したい店があったのですが、これ以上食べられないとギブアップ。食事はできませんでしたが、お店だけを取り上げていきます。
その1店舗がぶっかけ飯屋の『カオゲーンラッタナー(ข้าวแกงรัตนา)』。王室で仕えていた料理人が始めたというお店だけに評判がよく、ナンルーン市場でも有名な食堂です。
もう1店舗は『ナンターカノムタイ(นันทาขนมไทย)』。タイのお菓子を売る店で、ほんとうは最後にここのお菓子をいただき締めたかったのですが、来店したときには無情にも売り切れ。早ければ昼過ぎには売り切れるので、食べ歩き前に買っておくことをおすすめします。

『カオゲーンラッタナー(ข้าวแกงรัตนา)』

手前はマッサマンカレー。おかずの種類も豊富です。

『ナンターカノムタイ(นันทาขนมไทย)』。外観を撮影した時はまだ売り切れていなかったのに、再来店した時は…。

バンコクで最古といわれる市場での食べ歩き。今回の記事で紹介した6店舗だけではなく、他にも人気の食堂や屋台がありますので、たった一回の来訪だけでは制覇不可能。
幾度か足を運び、バンコクの歴史を感じながらタイ料理を食べ巡ってください。

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