炭火が赤々と燃ゆる釜戸に前にして、フランパンを手に持つゲーさんは客家料理を仕上げていきます。
創業して90年、店主は3代目になりましたが変わらぬ調理場の光景です。
ーーレムトーンポーチャナー
ヤワラートは1800年代後半に中国から移住してきた多くの華僑によって栄えてきました。
いろんな都市からタイへ渡ってきましたが、その中で多数を占めるのが潮州や汕頭出身の華僑です。
8割は潮州および汕頭と言われており、他には福建や海南、雲南、広東といった都市があり、さらに客家と呼ばれる華人も含まれています。
客家とは読んで字の如く、他所からやってきた人々という意味を持ち、もともとはどこの住民であったかということは正確には分かっていないようです。
しかし客家による伝承の多くが伝えることから、黄河流域一帯の住民であっただろうことが推測されています。
高木 桂蔵氏の著書「客家 -中国のうちなる異邦人-」によると、
「世界客属総会の発表によれば、現在客家人の数は、中国大陸に4千万人、海外に5百万人となっている。タイには5百万人の華僑がいる。このうち40万人が客家系である」
だそうです。
タイには40万人もの客家系の華僑がいるそうですが、彼らとタイ人との子孫が増えているのでどこまでを客家系と呼ぶのかが分からなくなっていると思います。
とにもかくにも、少数派ながら客家系華僑のタイ人はヤワラートにもいて、その1人が創業したのが冒頭で店名を挙げた『レムトーンポーチャナー』です。
目次
数日通っていただいた【レムトーンポーチャナー】の5品
客家料理は、潮州や広東、海南料理店では見たことがない料理があり、いつかは食べまくりたいとの願望を密かに抱いていたわたくしは、客家料理の専門店『レムトーンポーチャナー』にやってきました。
場所はMRTワットマンゴン駅から徒歩5、6分ほど、ジャルンクルン・ソイ12に立地しています。
来店し当たり前のように堂々と入り口から入店したところ、人影が見えず、店仕舞いした店舗のような佇まい。
閉店したという情報はなかったので、何かの間違いだろうと上階へと歩を進めました。
すると2階もがらんとしていて、さらに3階へ。
階段をあがるわたくしの胸中は不安感しかありませんでしたが、3階に来てようやく店舗らしき光景が見れて一安心です。
後で分かったことですが、『レムトーンポーチャナー』の1階では以前、タイ料理店を運営していたようですが数年前に閉店。
3階の客家レストランに行くには、入り口の脇にある階段を利用するようです。
リノベーションされた3階のエアコン部屋は、壁や中華提灯などによって赤が基調とされいかにも中華な雰囲気で、階段を上がってくる時の不安感は消えおのずと気持ちが昂ってきます。
写真付きのメニューには、見たことがない料理がずらり。
まずは店が推す2品からいただくことにいたしました。
パットタオフーカオマーク/ผัดเต้าหู้ข้าวหมาก
カオマーク(ข้าวหมาก)とは赤い餅米を使った甘酒で、それを調味料とし肉詰め豆腐を炒めた一品です。
カオマークはイエンタフォーのような色ですが、そこまで風味は強くなく、ほのかに甘くて優しい味付け。
肉詰め豆腐の旨さをしっかりと引き立てています。
ムーオップ/หมูอบ
客家系のレストランなら、ほぼこのメニューはあるでしょう。
豚肉と葉を煮込み蒸している一品。
色合いから濃い味を想像しますが思っていたほどでもなく、それでも白飯をがつがつ食べさせてくれる客家料理の代表するひとつです。
パットバミーケム/ผัดบะหมี่เค็ม
ちなみに、タイ語の料理名をGoogle翻訳させると「塩焼きそば」と表示されました。
この翻訳はあながち間違っておらず、太麺のバミー麺をもやしなどと炒めていて、食べて思ったのはまさに塩焼きそば!
太麺のバミーってのがたまりません。
ヤムバミーワーン/ยำบะหมี่หวาน
バミー好きとしてもう1品見逃せなかったのがこちら。
料理名から察するに「バミー麺の甘いヤム」になるわけですが、出てきたのはいわゆるヤムではありませんでした。
茹でた太バミー麺と自家製ルークチンを、シーユーで和えた一品です。
茹でたてなので太バミー麺は温かく、シーユーの甘さがほどよく、つるつるっといけちゃう。
そこにご自慢のルークチンが仲間入り。
2種類の付けだれはどちらも優しい酸味があり、これがルークチンに合うんだ。
ガイトムラオデーン/ไก่ต้มเหล้าแดง
昔々、レコードやCDを買う動機として「ジャケ買い」がありましたが、この一品は料理名を気に入って注文したため「料理名買い」といえばいいでしょうか。
料理名を自分なりに翻訳すると、「鶏肉をラオデーン(赤い酒?)で煮込んだ料理」となる。
ラオデーンの正体をオーナーに聞くと、1品目のパットタオフーカオマークで使っていた甘酒「カオマーク」のことでした。
つまり甘酒で煮た鶏肉料理。
実際にスープは甘酒っぽくて、ラオデーンで煮た鶏肉は柔らかく、まったくもって不思議な料理。
生姜も入っていたこともあり、食べ進めるうちに体がポカポカしてきて、うっすらと汗ばんできたほどです。
これはあくまでも憶測ですが、日本人が風邪をひいたとき甘酒を飲むように、この料理は体調不良のときにいただく一品なのかも。
他中華とは一線を隠す客家料理
ここで紹介した品々を見てもらえれば分かるように、客家料理は潮州や広東、海南料理とも違う、客家独特の調理法が用いられた料理の数々でした。
3日間通って上記の5品をいただきましたが、それでもまだまだ知らない料理ばかりです。
これからも『レムトーンポーチャナー』には足を運び、もっと客家料理を奥深さに触れていきたいと思います。
【レムトーンポーチャナー】の全メニュー
写真と英語名付きのメニューもあるので、そちらを見ればどのような料理なのかは分かると思います。
タイ語の料理名にカタカナ表記も付けて一覧にしましたので、こちらも参考にしてください。
パットタオフーカオマーク/ผัดเต้าหู้ข้าวหมาก
ムーオップ/หมูอบ
ルークチンシャイタオヌン/ลูกชิ้นไชเท้านึ่ง
カノムチープ/ขนมจีบ
フーキアントート/ฟุเกี๋ยนทอด
クントート/กุ้งทอด
ガイトートシーユー/ไก่ทอดซีอิ้ว
タオフーヤットサイトート/เต้าหู้ยัดไส้ทอด
タオフーヤットサイヌンเต้าหู้ยัดไส้นึ่ง
ゲーンチュートタオフー/ルアムルークチン/แกงจืดเต้าหู้ / รวมลูกชิ้น
パットバミーワーン/ผัดบะหมี่หวาน
パットバミーケム/ผัดบะหมี่เค็ม
バミーラートナーガイ/クン/ムー/บะหมี่ราดหน้าไก่ /กุ้ง/หมู
バミーケム/บะหมี่เค็ม
ヤムバミーワーン/ยำบะหมี่หวาน
パットセンミーヘンカオマーク/ผัดเส้นหมี่แห้งข้าวหมาก
センミーナームカオマーク/เส้นหมี่น้ำข้าวหมาก
ヤムセンミーマスタード/ยำเส้นหมี่มัสตาด
ルークチンムートート/ลูกชิ้นหมูทอด
ガポムープリアオワーン/กระเพาะหมูเปรี้ยวหวาน
タオフーパットナムマンホイ/クンシャイ/เต้าหู้ผัดน้ำมันหอย / คื่นไช่
パットシーヤーン/ผัดสี่อย่าง
パットカナームーケム/ผัดคะน้าหมูเค็ม
ガイパットメットマムアン/ไก่ผัดเม็ดมะม่วง
クンパットソートラオデーン/กุ้งผัดซอสเหล้าแดง
ガイパットソートラオデーン/ไก่ผัดซอสเหล้าแดง
クンパットマラカオマーク/กุ้งผัดมะระข้าวหมาก
ガイパットマラカオマーク/ไก่ผัดมะระข้าวหมาก
ホアプラーチーンモーファイ/หัวปลาจีนหม้อไฟ
ゲーンチュートルークチンソーンヤーン/แกงจืดลูกชิ้นสองอย่าง
パットパックガートホームカオマーク/ผัดผักกาดหอมข้าวหมาก
ガポムーギアムチャーイカオマーク/กระเพาะหมูเกี้ยมฉ่ายข้าวหมาก
ガイオップクルア/ไก่อบเกลือ
ガイトムラオデーン/ไก่ต้มเหล้าแดง
店名 | レムトーンポーチャナー/เเหลมทองโภชนา |
営業時間 | 12:00-17:00 |
定休日 | 基本無休 |
Google Map | https://goo.gl/maps/kCpkjktk7Y47jT3p8 |