中華街のヤワラートには創業数十年といった老舗が無数にあり、私の知的好奇心をとことんくすぐってくれるエリアです。
渋い店が点在するヤワラートで、今回紹介する『ライヘンポーチャナー』の渋さたるや数百店舗を取材してきた私でさえ、近寄りがたい雰囲気を発している稀有な食堂といっていいでしょう。
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海南島出身の華僑が開いた『ライヘンポーチャナー』
ヤワラート通りからSong Sawat通りへと入り20メートルほど南下。この通りは何度も通ったことがあったにも関わらず、『ライヘンポーチャナー』の存在に気づかなかったのは、開店休業しているような寂れた食堂然としていたからでしょう。
開店休業を想起させる原因として考えられるのは、まず軒先に置かれたショーケースを挙げておきたい。ショーケースとはカオマンガイ店でよく使われているものと同じで、同店にあるのは食材のひとつも保管されておらず、不用品のごとく店の前に居座っている。店にとってもっとも重要と思われるエリアに置かれたこの木偶の坊は、『ライヘンポーチャナー』の開店休業感を醸し出すに一役もしくは二役買っているといっていいでしょう。
そしてもう1点、店内の猥雑感も侮れません。テーブル周りは片付いているものの、店の奥まったところにはチャンビールなどの段ボールが積み重ねられ、レジ周辺も、私有物なのか店のものなのか判別がつかない品々でゴッタ煮になっています。
「創業してから50年以上。ここは海南島出身の華僑が始めたお店です」
注文を取りに来た中年女性は私の質問に答えると、早足で店の奥へと消えて行きました。店内にいるのは彼女の他、客席でずっと座っている老婆がいるぐらいで、スタッフを雇っている様子はなさそう。唯一店にいる老婆は女性店主の母親のようで、高齢のため立ち仕事は厳しいのか常に着座したままで、実質働いているのは注文を取りに来た中年女性だけです。
開店休業感を醸し、最低限の人員で店が運営されている『ライヘンポーチャナー』。ここを訪れるほとんどのタイ人がオーダーするのがタイスキです。
チムチュムのようなタイスキ
タイスキといえば『MKレストラン』などで見る、ステンレス製の鍋にスープと具材を入れた姿を思い浮かべるでしょう。ところが『ライヘンポーチャナー』のタイスキはまったく異なったスタイルで提供されます。
まず鍋を熱するのはチムチュム鍋で使われる炭火の台。そして具材を煮るのは、家庭用の料理器具で使われるような小さなステンレス製の鍋。蓋のデコボコ感から察するに、きっと何年も使っているのでしょう。一般的なレストランでこの鍋が出てきたらドン引きでしょうが、『ライヘンポーチャナー』なら違和感は一切ございません。
タイスキの食材は白菜や空芯菜、春雨といった野菜類と、生卵が乗った豚肉。肉は鶏肉、豚肉、牛肉の3種から選べるようになっています。食材と鍋だけを見るとチムチュムとなんら違いがありませんが、異なっているのはナムチム(付けダレ)です。
鍋の具合の味を引き立てるどころかナムチム自身が存在感を示しているほど、『ライヘンポーチャナー』のナムチムが深みがあり旨い。
海南島出身の華僑の店であるがゆえ海南料理が原型になっているためか、壁に貼り付けられたメニューを見ても、聞いたことのない料理名がずらりと並んでいます。
私は『ライヘンポーチャナー』に何度か通い、タイスキだけではなくメニューの数品をいただきました。
ゴイシーミー /โกยซีหมี่100バーツ
細麺のバミー麺を表面だけさっと炒め、タケノコ、豚肉、ネギなどの具材とあんかけでいただくゴイシーミー。
薄味に仕上げられたあんかけは、好みで黒酢を少々足すとがらっと印象が変わるので、途中で味を変えて楽しんでみてください。
パットチャプチャイ/ผัดจับฉ่าย 200バーツ
取材後に知ったことですが、海南島華僑の食堂ではよく見かけるメニューです。
春雨をベースに、白菜、ネギ、中国タケノコ、イカ、エビ、キクラゲ、豚肉、豚レバー、干しエビを炒め、オイスターソースなどで味をまとめた一皿。シーフードや豚肉、野菜をごっちゃにして炒めた料理ですが、きっちり一体感を出しているのはさすが。
ヌア パットナンマンホイ/เนื้อผัดน้ำมันหอย 200バーツ
ニラ、ネギ、牛肉を塩胡椒やオイスターソースなどの調味料で味付けし炒めています。
こういったシンプルな料理が旨いのは調理人の力量があってこそ。
シークロンムー ナムデーン/ซี่โครงหมูน้ำแดง 200バーツ
シークロンムー(スペアリブ)を揚げて、ナムデーン というソースを絡めています。上に乗っているのはグリーンピース。
揚げ具合の妙で衣はさくさくしており脂っこさはなく、トマトベースのようなナムデーンのほのかな酸味と甘みをまとい、揚げ物好きならたまらないはず。
『ライヘンポーチャナー』の全メニュー
タイスキの他にいただいた上記3種の料理も秀逸だった『ライヘンポーチャナー』。他にもメニューがあり料理数は全8種です。おばちゃんお一人で調理されているので一度に来客が押し寄せた時は、提供時間に30分ほどかかることもありいますが、寛容な心でお待ちください。
สุกี้ หมู , ไก่ , เนื้อ/スキームー(豚)ガイ(鶏)ヌア(牛)
หัวปลาน้ำแดง/ホワプラー ナムデーン
ซี่โครงหมูน้ำแดง/シークロンムー ナムデーン 200バーツ
ปีกไก่เหล้าแดง/ピークガイ ラオデーン
ผัดจับฉ่าย/パットチャプチャイ 200バーツ
หมู , เนื้อผัดน้ำมันหอย/ムー ヌア パットナンマンホイ
โกยซีหมี่/ゴイシーミー
ข้าวผัด หมู , ไก่ , กุ้ง/カオパット ムー(豚)ガイ(鶏)クン(エビ)
【SHOP DATA】
「ライヘンポーチャナー(ไล่เฮง โภชนา)」
TEL:02-234-1909
OPEN:12:30-21:00(基本無休)
PRICE:スキー300バーツ