普段このブログでは、ローカル食堂や屋台など、日常使いできる“タイの庶民の味”ばかりを紹介しています。
しかし最近、「タイ料理の奥深さをもっと知りたい」という気持ちが強くなり、 名店・実力店にも足を運ぶようになりました。
今回紹介する『At-Ta-Rote(อรรถรส)』は、そんな中でも特に印象に残った一軒。
派手な店ではないのですが、一皿ごとに“昔ながらのタイ料理の物語”が宿っていて、食べていて思わず背筋が伸びるような、そんな魅力を持っています。


創業から10年以上、“本来のタイ料理を次世代へ”という想いのもと、伝統レシピを丁寧に守り続ける名店。
今回はその『At-Ta-Rote』の料理と哲学を、じっくり紹介していきます。
伝統料理の精神を受け継ぐレストラン
At-Ta-Roteを語る上で欠かせないのは、主要パートナーであるギフトさん(คุณกัญจนิดา ตันติสุนทร)の存在です。
彼女はタイ伝統料理の第一人者として知られるスリソモン・コンパン先生(อาจารย์ศรีสมร คงพันธุ์)の下で料理を学び、宮廷料理にまで通じる古典レシピを徹底的に修得しました。

そこで出会ったのが、ラマ2世時代から伝わる 「サェンクワ・クン(แสร้งว่ากุ้ง)」 のような歴史ある料理たち。
その背景にある物語や技法を知るうちに、
“昔のタイ料理を、今の時代にも正しく伝えたい”
という強い気持ちが芽生えたと言います。
この思いが、店の姿勢にもそのまま反映されています。
- 化学調味料は使わない
- ココナッツミルク・カレーペーストもすべて手作り
- 素材は鮮度・香り・食感を厳選
地味で派手さはありませんが、タイ料理の“根っこ”をしっかり守ろうとする姿勢が店の芯になっています。
伝統 × 今の感性で作る料理
『At-Ta-Rote』の料理は、古典レシピに寄り添いながらも、現代の食文化に合うように自然なアレンジが施されています。
どれも「奇をてらった」料理ではなく、食材の香りや火加減、調味料の重ね方など、丁寧さが際立つものばかりです。
サェンクワ・クンのクラトントーン(แสร้งว่ากุ้งในกระทงทอง)250バーツ

ラマ2世時代に生まれた宮廷料理。
海老、揚げたナマズフレーク、細かく刻んだコブミカンの葉、香り野菜を繊細に和え、サクサクのタルトに盛り付けた前菜です。
一口で“古典タイ料理とはこういうものか”と納得させられる一品。
ロータスリーフ・ミャンカム(เมี่ยงคำบัวหลวง)240バーツ

干しエビ、生姜、赤オニオン、ローストココナッツなどを、香り高いチャプルーの葉で包む店オリジナルのミャンカム。
蓮の花びらを使う伝統から一歩踏み込み、香りを優先したアレンジが見事にハマっています。
マッサマンガイ(มัสมั่นไก่)320バーツ

特製ペーストを一から作り、油が分離しない古典的なレシピに忠実に仕上げています。
滑らかで深いコクがありながらも、優しさのある味わい。
トムジウ・コームー(ต้มจิ๋วคอหมู)350バーツ

宮中で病人食としても出されていたという伝統料理。
澄んだスープにハーブがほのかに香り、豚トロのプリッとした食感が心地よい、静かに沁みる一杯。
ガパオ混ぜご飯&和牛グリル(ข้าวกะเพราคลุก & วากิวย่าง)695バーツ

古典料理ではありませんが、現代の食文化を象徴する一皿。
ガパオの濃厚な味をまとった和牛と混ぜご飯は、香り・旨味のバランスが絶妙で、外国人にも人気。
バナナフリット・塩卵ソース(กล้วยทอดซอสไข่เค็ม)160バーツ

サクサクの衣と濃厚な塩卵ソース。定番おやつが“レストランの味”に格上げされています。
自家製ココナッツアイス(ไอติมกะทิทรงเครื่อง)195バーツ

濃厚で香り高い自家製ココナッツミルクを使った、食後にぴったりの涼やかな甘さ。
“タイ料理の原点”を静かに教えてくれる店
『At-Ta-Rote』は、派手なプロモーションや奇抜なアレンジではなく、伝統の技法と手作業が積み重なった“本質のタイ料理”を食べさせてくれる店です。

ローカル食堂を巡ってきた身としても、こういう一皿に出会うと「タイ料理って本当に奥が深い」と改めて感じます。
屋台も好き、食堂も好き。
でも、たまにはこういう“静かな名店”で、タイ料理の原点を味わってみたくなる。
『At-Ta-Rote』は、そんな気持ちにぴったり応えてくれるお店でした。
| 店名 | At-Ta-Rote(อรรถรส) |
| 営業時間 | 11:00-22:00 |
| 定休日 | 基本無休 |
| Googleマップ | https://maps.app.goo.gl/VgZuWYFP21jG831E7 |


