チャオプラヤー川と平行して走るように並ぶジャルンクルン通り。
この通りをBTSサパーンタクシン駅より南下し、途中『アジアティーク』を右手に見ながらしばらく南進したあたりに、風変わりなパッタイ屋があるという情報を入手しました。
営業時間は1日に2時間“奇跡のパッタイ屋”
営業開始17時30分、閉店が19時30分とたった2時間しか営業しないというパッタイ屋です。
2時間しか営業しない店舗は、いままで取材した中で最短。
以前、週に3日しか営業しないクイッティアオ屋を“奇跡のクイッティアオ”と名付けましたが、それならばココは“奇跡のパッタイ屋”ではないか…。
“奇跡のパッタイ屋”はどこだ!?
とある土曜日、このパッタイ屋を目指しジャルンクルン通りを南進いたしました。
ジャルンクルン通りの南端まで進むと左手に見えてくるのがジャルンクルン・ソイ107。
ここを左折したところにあるようです。
T路路まで差し掛かると、屋台や商店が並び市場のような賑やかさ。
さて、パッタイ屋はどこだろか。
あっちへ行っては戻り、違う方向へ行ってみては周囲を調査してみるものの、パッタイ屋らしき姿は見当たりません。
きっとここだろうと思う地点を見つけたところで、近所のおじさんに聞いてみることに。
――この辺にパッタイ屋ないですか?
「あぁ、あそこだよ」
そういって指を指した場所は角地。
シャッターは閉じられており、パッタイの「パ」の字も見当たらなければ看板もありゃしない。
――あそこ?
「そうだよ。でも土曜日と日曜日は定休日だから今日はやってない」
テイキュウビ!
事前に営業時間は掴んでいたものの、定休日が土日だとは知らなかった…。
30分ほど探しても見つからないわけだ。
そして数日後、雪辱を晴らすべくふたたびこの場所へと訪れたのは平日の18時前でした。
営業時間も定休日もつかんでいたので、さすがにこの日は営業していましたが、雨季真っ盛りのバンコクはこの日どしゃ降り。
到着したころにはずぶ濡れになっていて、びちょびちょのまま席へ付きメニューを拝見しました。
メニューを見ましたが、見る必要はあまりなかったようです。
メニューにあるのは、ノーマルのパッタイとエビ入りパッタイの2品のみ。
他に載っているのはジュースなどのドリンクだけです。
ちなみにビールもありませんし、白ご飯もなし。
パッタイだけで勝負している潔さを感じます。
絶妙な味わいのエビ入りパッタイ
私がオーダーしたのはエビ入りパッタイ。
一般的にパッタイの麺は米を原料とした平麺が多いですが、こちらのパッタイはクイッティアオに使うようなノーマルな麺、センレックです。
具材はもやしやニラ、干しえび、豆腐といった通常のパッタイと同じラインナップ。
前処理で麺に味を染み込ませてはおらず、炒めるときにだけ味付けしただけのセンレックは、もちもち感に溢れていて旨い!
味が濃過ぎず、私個人的には好みのパッタイです。
付け合わせにはもやしや生ニラ、バナナの花、マナオといったベーシックなもの。
バナナの花はパッタイの付け合わせによく登場しますが、私はほとんど食べることはありません。
マズいわけでも嫌いなわけでもないですが、もやしとニラがあれば十分ですし、たいして旨いものでもないので触手はまったく伸びません。
必要なのかなぁ。
外を見るとどしゃ降りの雨は小康状態になるわけでもなく、相変わらず激しい。
激しい雨の中、来客する人は当然少ないわけでお店にとっては憂うべき事態ですが、取材する側の私にとっては好都合。
忙しいと話しを聞くことすらままなりませんが、客数ゼロなら私と話しをする以外にやることないですからね(笑)
店頭では白髪の初老の男性と、調理を担当している奥さんと思われる女性がいて、その他は女性従業員が2名おられました。
私が話しかけたのは、調理している女性です。
1日に2時間しか営業しない訳とは
――ここは何年ぐらい営業しているのでしょうか?
「40年ぐらいじゃないかしら」
激しい降雨による雨音のため私のタイ語が聞きづらかったようで、従業員のタイ人女性が間に入ってくれ改めてタイ語で伝えてくれました。
日本人のタイ語→タイ人のタイ語→店主、という風変わりな通訳でコミュニケーション。
世間話などを盛り込んだ後、核心となる質問をぶつけました。
――なぜ1日に2時間しか営業しないんですか?
「もう年だしね。あんまり長くやると疲れちゃうから」
女性店主は苦笑いしながらそう話してくれました。
疲れるといっても、売上げが上がらなければ生活できないでしょう。
私の視線は、店頭に並んでいた山盛りのもやしとセンレックに。
――このセンレック、1日に何キロぐらい出ますか?
「そうねぇ、だいたい12キロぐらいかしら」
12キロのセンレックって、何人前のパッタイが作れるんだろうか。
しかも営業時間はたった2時間。
この短時間で12キロのセンレックを売り切れるのだから、たった2時間の営業時間、しかも土日休みの週5日営業でも十分やっていけるのでしょう。
私が話していたのは女性店主と女性従業員、そして会話途中から現れた息子さん(?)らしき若い男性です。
白髪の男性店主はどうも口数が少なそうな印象で、店の奥にあるカウンター内へ座り大音量でテレビ番組を観賞し始めちゃいました。
女性店主は日本食や日本が好きなようで、みなさんと一緒に日本についての話しなどをしていると、どしゃ降りだった雨模様が小康状態になり、お客さんが続々と来店。
忙しくなり始めたので、最後に一つだけ質問することに。
――看板がないですけどお店の名前は?
「店の名前? ないよそんなのもの」
名も無きパッタイ屋はみるみる忙しくなり、小降りになった雨空を見上げながらお店を後にしました。
【SHOP DATA】
「名も無きパッタイ屋」
TEL:02-289-3048
OPEN:17:30-19:30(土日休み)
PRICE:パッタイ40B、エビ入りパッタイ80B