美味い店々が点在し、私が一目置いている通りがございます。いつの日か取り上げますが、チャオプラヤー川を越えたところにあるラートヤー(ลาดหญ้า)という通りです。
ラートヤー通りがあるトンブリー地区は、現王朝のチャクリー王朝(別名:ラタナコーシン王朝)が出来る以前、トンブリー王朝として栄えていた由緒ある地域です。
トンブリー王朝は稀代なカリスマ性をもったタークシン王の手によって創設されましたが、繁栄したのは彼一代限りの15年間(1767年 - 1782年)という、短命で幕を閉じました。
15年間だけとはいえ王朝が栄えたエリアですので、歴史的な趣を感じる場所もあり、散策や食べ歩きでおすすめしたい地域です。
冒頭から小難しい歴史の話を展開いたしましたが、今回みなさんに知ってもらいたい店は、このトンブリー地区にあるガオラオの屋台です。
ガオラオだけの一品だけで勝負!『ラーントムヌアパーミヤオ』
何かを検索しているときに、ふと見つけたのがガオラオ屋台の『ラーントムヌアパーミヤオ(ร้านต้มเนื้อป๋าเหมี่ยว)』。
立地場所は厳密にはラートヤー通り沿いではなく、ラートヤー通りからイサラパープ通り(ถนน อิสรภาพ)を入り、ひとつめの交差点近く。
ドンブリー地区にほとんど来ることがない方にとっては、通り名をお伝えしたところでカタカナの羅列にしか映らないでしょう。最寄駅であるBTSウォンウェンヤイ駅から店まで、徒歩で向かうルートを示してみました。
徒歩だと15分から20分程度のよう。バイクタクシーを使えば5分ほどではないでしょうか。バイタクを使うならイサラパープ通りのタイ語を見せれば伝わるはず。
ถนน อิสรภาพ
私は駅から徒歩で向かったわけではなく、所持しているスーパーバイク「Honda Click」をかっ飛ばしました。
歩道に建てられた屋台では店主と思わしき女性が立ち、朝から途絶えることなく来店する客たちに向け、ガオラオを提供しています。
ざっと見渡してみましたが、ガオラオだけで勝負している同店には、店頭にもテーブル上にもメニューなんてものはなし。
普通盛りか大盛りかを選び、あとは投入する具材の希望さえ伝えればよろしい。
屋台には下ごしらえされた牛もつ類が数種並んでいます。
「うちで置いている牛もつは6種類だよ」
優しい笑顔を見せながら女性店主は教えてくれました。私は全種を入れてもらった普通盛りをオーダー。注文し終えるとテーブルに着いたのですが、若いお兄ちゃんが何やら私に話しかけてくる。
「ご飯が欲しいなら自分で入れてね。あと、ナムチムも」
ご飯をよそうのも、ナムチム(付けダレ)を入れるのも、そして水も、すべてがセルフサービスだと言う。ナムチムや水がセルフサービスってのは時折あるけど、ご飯までセルフとは珍しい。
特筆しておきたいのが、自身で入れるナムチムです。店独自で作ったナムチムは酸味と辛みで仕上げられているのですが、他の客を観察してみると皆さんこのナムチムに、隣にある得体の知れないものを投入している。
ぶよぶよした物体は野菜のようにも見えるのですが…。
「これはマナオを煮たものだよ。酸味がもっと欲しいなら入れてごらん」
マナオを煮たもの? ナムチム用にマナオを煮て置いているのか…。
当初はそう思っていたんですが、のちほどスープを見せてもらった際に気付きました。スープのダシの材料としてマナオを使っており、そこで使ったマナオを入れているようです。
ダシで使われたマナオではありますが、身の部分をナムチムに入れてみると、柔らかな酸味が増して美味い。
そして主役のガオラオ。
ガオラオといえば茶色く濁ったスープが多いですが、こちらのスープは透明感があり、優しさと深みがありさっぱりとした味わい。
6種の牛もつ類は贅沢にどっさりと使われ、どれも臭みはまったく無し。辛みと酸味が効いた特製のナムチムでいただくとご飯が進む!
ガオラオといえばタイ米を使った白飯を出すところが多いですが、ここではジャスミンライスを使用しています。
一般的なガオラオとは異なった、透明感があり深みもあるさっぱりとしたスープ。
ダシとして使っている具材すべては教えてくれないでしょうが、鍋の中を見せてもらいたいと申し出たところ快諾してくれました。
マナオとパイナップルが入ったスープ
湯気がもうもうと立ち上るスープ鍋を覗き込むと、長時間煮込まれているため形状が崩れているのか、野菜なのかなんなのかが分からない物体がぷかぷか浮いている。
「これはマナオで、これはサパロット(パイナップル)ね」
私は調理人ではないし、ガオラオを自身で料理したこともないけれど、スープのダシにマナオやパイナップルを使うのは珍しいように思います。
少なくとも私がこれまで来店したガオラオの店で、これらを具材に使っているスープは見たことがない。
何年もかけて編み出した老舗のスープなのかと思ったのですが。
「創業した年数? 2年半前だよ」
老舗ではありませんでした。
女性店主がひとりでやっているのではなく、お兄さんとの二人三脚で営業。弟さんは写真には写っていませんが、私やお客さんに気さくに話しかけ、コニュニケーションを深めています。
朝から繁盛しているため、閉店時間の12時までに具材が売り切れてしまうことも少なくないのだとか。
一味違うガオラオを味わってみたいなら、朝早くに来店することをおすすめします。
【SHOP DATA】
「ラーントムヌアパーミヤオ(ร้านต้มเนื้อป๋าเหมี่ยว)」
TEL:081-903-0652
OPEN:07:00-12:00(月曜日休み)
※品切れで早めに閉店することも
PRICE:ガオラオ(並)100B、(大盛り)120B