とある方から、バンコクの日本食店『黒田』で地鶏を藁で焼く料理が以前メニューにあったと聞きました。
藁で焼く地鶏「藁焼きガイヤーン」です。
こんな料理聞いたことがないけれど、『黒田』の社長いわく
「古くからある料理」
だそうです。
ところが『黒田』で始まった「藁焼きガイヤーン」は瞬時にしてメニューからなくなり、幻の料理となってしまいました。
『黒田』がメニューから外したのは、きっと「危ない」という理由からだったのではないかと。
バンコク都内で長時間、屋外で炎を上げて調理するのは難しいのかもしれません。
目次
藁焼きガイヤーンを求めてスパンブリー県へ
それからというもの、「藁焼きガイヤーン」なんて料理がほんとにあるのか調べる日々。
するとありました!
「ガイヤーン」なのでてっきりタイ東北部(イサーン地方)に集中しているのかと思いきや、見つかった数店舗のほとんどはスパンブリー県です。
前日の記事「サムチュック百年市場で食べたカオホーバイブア(蓮の葉包みご飯)が激ウマ!」でお伝えしたように、スパンブリー県はバンコクの北西に位置し、車で2時間ほどの距離にある県。
私が目指したのは、『サムチュック百年市場』から南へ下り、ナコンパトム県との県境にある『クルアガンナー』というタイ料理店です。
のどかな田園風景と燃える大量の藁!
場所は、スパンブリー県の有名観光スポットである地獄寺『ワット パイロンウア(วัดไผ่โรงวัว)』のすぐそば。
辺りは田園風景が広がるのどかな場所です。
『クルアガンナー』の駐車場に車を停め、車外に出ると、不穏な白煙が辺りに立ちこめている!
これはもしや、藁焼きガイヤーンを今まさに焼いているところじゃないのか!!
入店してもいないのに煙が立ちこめる場所へ駆けると、大量の藁が焼けこげている。
間違いなく地鶏を焼いているところでしょう。
急いで写真を撮り始めると、一帯を覆う白煙は容赦なく眼球を刺激。
「目がいてー!」
何も考えず風下から接近したため、もろに煙を浴びてしまいました……。
美しい田園が眺められるレストラン
『クルアガンナー』は思っていた以上に小洒落たタイ料理店で、表にも席が設けられ、ここからは豊かに実った田園を眺めることが出来ます。
黄金色と緑のコントラストで彩られた田園は、日本人ならば心に沁みる風景でしょう。
プラチョン(雷魚)まで丸焼き
田園が見える表の席に着席し、オーダーしたのは藁焼きガイヤーン。
タイ語では「ガイオップファン(ไก่อบฟาง)」と呼ばれ、一匹丸ごとが1人前です。
メニューはすべてタイ語ですが、掲載されている写真に丸焦げになった魚の姿が…。
聞くと、雷魚を同じく藁で丸焼きにした「プラチョン パオ(ปลาช่อนลุยนา )」という料理だと言います。
地鶏も雷魚も藁で丸焼きにしてしまおうっていう発想が、素敵じゃありませんか!
他にトムヤムクン、ソムタム、カオパット(炒飯)を注文。
店員は、鶏が焼き上がるまで30分ほど、魚は10分ほどかかるというので、それまでの間、藁焼きの行程を見せてもらうことにしました。
ふたたび藁焼き現場へ向かうと、若いお兄ちゃんがちょうどドラム缶から取り出そうとしているタイミング。
固唾をのんでカメラを構えていたら地鶏じゃなく魚だった……。
彼は魚を取り出し、もう1匹を焼くたべの準備を始めました。
魚をセッティングするとファイヤー!
藁に炎が燃え上がると別の場所で焼いていたドラム缶へ移動。
「こっちは地鶏だよ」
微笑みながらそう教えてくれ、ホウキを使いドラム缶をオープン!
登場したのはこんがりきつね色に焼き上がった地鶏です。
2匹を焼くために大量の藁が使われ、焼き上げるのに時間を要するため、どこでも調理できるものではないでしょう。
そりゃ『黒田』も止めちゃいますね…。
2匹の地鶏を皿に並べると、次の地鶏をセッティングし始めました。
テーブルへ運ばれてきたガイオップファンとプラチョンパオです。
藁焼きガイヤーン「ガイオップファン」登場!
地鶏はガイヤーンのように下味がほとんど施されていないため、鶏本来の味が楽しめ、ジューシー。
さらに特筆したい点は、肉がめちゃ柔らかいこと!
ガイバーンという地鶏を使っているのに、これほど柔らかく仕上がっているのは、ドラム缶の中でじっくり蒸し焼きにされているからでしょう。
これはガイヤーンではなく、「ガイオップファン」!
雷魚の蒸し焼きには3種の付けダレがあり、焼きナスと一緒に頂くようです。
蒸し焼きされた雷魚の白身はほくほくで、不思議なことに焼きナスと合う!
この2品の他、おすすめしたいのはソムタムです。辛過ぎず、マイルドながら旨味があり、このソムタムはいい!
『クルアガンナー』に来店したら、ガイオップファン、プラチョンパオ、そしてソムタムは必ずオーダーしてもらいたい。
宿泊施設も備えた『クルアガンナー』
さて、食べ過ぎて腹が膨れに膨れた私は、忙しくなりそうだったので店主に話しを聞くことにしました。
店主の男性はパッタラポンさんです。
「ここをオープンしたのは10年前です。外国人のお客さんも来店しますよ。少し前は韓国人の大学生が団体で来てくれました」
そう話しながら、スマホに保存していた写真を見せてくれた店主。
日本人も来店したことがあるそうです。
彼はスパンブリーで生まれ、スパンブリーで育ったと言うのですが、なぜイサーン料理をここでやろうと思ったのだろうか。
「ガイオップファンはイサーン料理じゃなく、スパンブリーの料理なんです」
ということはスパンブリーの郷土料理!?
と思ったのですが、後日調べてみたところ、田んぼが多い地域に見られる料理だそうで、カンチャナブリーやチェンマイにもあるそうです。
実は来店当初から気になっていたことがあり、それは店の隣りに並んでいた数棟あるコテージのような宿泊施設。
聞くと、パッタラポンさんの妹さんが運営している施設だと言います。
さっそく妹さんをご紹介していただき、施設の中を見せてもらうことに。
『クルアガンナー』の隣りに9棟並ぶ宿泊施設は、一部屋で2人が泊まれ、朝食付きで一泊1000バーツ。
「3ヶ月ほど前に開業したんです」
『Ruan Thai Home Resort』と名付けられたこれらの施設は、彼女の友人との共同経営だそうです。
取材に訪れた日は8棟が満室。
週末は予約でいっぱいになることが多いと言います。
間違いなくバンコクでは食べられないガイオップファン。
スパンブリー県に広がる田園風景を眺めながら、この地鶏焼きを食べに行きませんか?
9月のオフ会は『クルアガンナー』を予定しています。
近々詳細を発表しますので、お楽しみに!
【SHOP DATA】
「クルアガンナー(ครัวกางนา)」
TEL:086-903-0787,084-117-5971
OPEN:11:00-21:00(無休)
ADDRESS:160/1 หมู่11 ต.บางตาเถร อ.สองพี่น้อง จ.สุพรรณบุรี สุพรรณบุรี
PRICE:ガイオップファン250B、プラチョンパオ280B、